高松高等裁判所 昭和31年(ラ)40号 決定 1958年10月31日
抗告人 国
訴訟代理人 大坪憲三 外一名
相手方 向井善勝
主文
原決定を次の通り変更する。
相手方と抗告人との間の農地買収無効確認請求事件(当庁昭和二八年(ネ)第三七号事件)につき、当高等裁判所か昭和三十一年三月二十三日なした判決により、抗告人の負担すべき訴訟費用額を金二万千二百五十二円と確定する。
抗告費用は抗告人の負担する。
理由
本件抗告の趣旨は、「原決定を取消し、更に相当の裁判を求める」というのであり、その抗告理由は別紙記載の通りである。
相手方向井善勝は、抗告人国を被告として、昭和二十五年五月四日松山地方裁判所に農地買収無効確認請求の訴(同庁昭和二五年(行)第一五事件)を提起したところ、昭和二十七年十二月二十五日抗告人国敗訴の判決言渡があり、抗告人国は右判決に対し当高等裁判所に控訴を提起したが(当庁昭和二十八年(ネ)第三七号事件)昭和三十一年三月二十三日当高等裁判所は原判決を一部変更した上、訴訟費用は第一、二審共控訴人(抗告人国)の負担とするとの判決を言渡し、右判決は確定したこと並に右向井善勝は松山地方裁判所に右事件の訴訟費用額確定の申立をしたことは本件訴訟費用額確定申立記録及び前記訴訟事件記録に徴し明らかである(以下前記訴訟事件を便宜本案事件と称する)。
抗告理由第一点について。
論旨は、当事者またはその代理人が同一裁判所の同一期日に数件の訴訟事件を兼ねて出頭した場合における旅費宿泊料は、その事件数に等分した額を以て当該事件の訴訟費用として計上すべきであるところ、本案事件の控訴審において、相手方向井善勝の訴訟代理人(被控訴代理人)であつた弁護士岡田玄次郎は、当高等裁判所の口頭弁論期日に他の控訴事件数件を兼ねて出頭しているから、原裁判所が右訴訟代理人の旅費宿泊料の金額を本件の訴訟費用として計上したのは失当である、というのである。
仍て検討するに、原決定は、本案事件の控訴審(当高松高等裁判所)における昭和二十八年七月十六日、同年十一月十七日、昭和二十九年六月二十八日、同年九月十日、昭和三十年三月十五日、同年五月二十四日、同年八月十六日、同年十月十一日及び同年十二月十三日の各口頭弁論期日に、相手方の訴訟代理人(被控訴代理人)弁護士岡田玄次郎(同弁護士の事務所は松山市二番町十五番地)が出頭した旅費宿泊料(一期日につき金千五百十円)を訴訟費用として計上しているところ、本件訴訟費用額確定申立事件記録中の当高等裁判所裁判所書記官小野山貞義作成に係る証明書に徴すれば、右各口頭弁論期日には、前記岡田玄次郎弁護士が訴訟代理人となつている他の控訴事件が数件同一期日に指定されていたことを認めることができ、右岡田弁護士は、前記各口頭弁論期日に他の受任訴訟事件をも兼ねて松山市より当高松高等裁判所に出頭したものであることを一応窺うことができる。しかし相手方の訴訟代理人が他の訴訟事件をも兼ねて前記各口頭弁論期日に出頭したとしても、その訴訟代理人が他の訴訟事件の当事者より旅費宿泊料の全部または一部の支弁を受けていて、相手方がその全部または一部を支弁しなかつたことを認めるに足る資料がないから、原裁判所が本件訴訟費用額確定に際し、民事訴訟費用法第十二条及び第十三条、訴訟費用等臨時措置法第三条の各規定に従い、相手方の申立を相当と認めて、相手方の訴訟代理人が前記各口頭弁論期日に出頭するために通常要する旅費宿泊料の全額を訴訟費用として計上したことが必ずしも不当であるとはいえない。訴訟代理人が数件の訴訟事件を兼ねて口頭弁論期日に出頭した場合その旅費宿泊料を必ずその事件数に等分して訴訟費用額を算出すべきであるとの所論はにわかに左袒し難く、論旨は採用できない。
同第二点について。
論旨は、訴訟費用額確定決定申立に添付する費用計算書の書記料は裁判所用一通分及び相手方の数に応じた分以外は訴訟費用とならないと解すべきであり、本件の場合相手方は一名であるから二通分のみが訴訟費用となるに過ぎないところ、原決定が右費用計算書書記料として六通分金五百八十五円を計上したのは不当であるというのである。仍て検討するに、訴訟費用額確定申立書に添付する費用計算書については、右申立書に添付する分と民事訴訟法第百一条により相手方に交付する分(相手方の数に応じた数)との書記料のみが訴訟費用となるものと解するを相当とするところ、本件の場合相手方は一名であるから費用計算書二通分の書記料のみが訴訟費用となるものといわなければならない。而して本件費用計算書の書記料は、一通(六枚半)につき金九十七円五十銭であること明らかであるから(民事訴訟費用法第二条、訴訟費用等臨時措置法第二条参照)、その二通分の書記料金百九十五円のみが訴訟費用であるに拘らず、原決定が六通分の書記料金五百八十五円を訴訟費用として計上したのは失当であるというべきである(尤も相手方は、費用計算書六通を原裁判所に提出したことが記録上窺えるけれども、右は裁判所の事務処理の能率をあげるため申立人の協力を求めて、決定原本及び決定正本に添付する計算書等をも便宜訴訟費用額確定申立人に作成提出させたためであつて、かかる計算書は本来裁判官または裁判所書記官が作成すべきものであるから、かかる計算書の書記料は訴訟費用の中に含まれないものと解するのが相当である)。従つて原決定において費用計算書書記料として計上した金五百八十五円中二通分の書記料金百九十五円を超える部分即ち金三百九十円は不当であり、この点の論旨は理由がある。
同第三点について。
論旨は、先ず原決定は控訴審において相手方(被控訴人)がなした昭和二十九年四月十九日付及び同年十二月二十四日付各期日指定申請に関する費用を訴訟費用として計上しているところ、右各期日指定申請は訴訟事件がいわゆる休止となつている場合になされたものであるが、当事者が口頭弁論期日に出頭しないことは権利行使の重大な懈怠であり、いわゆる休止の状態にある場合の期日指定申請に関する費用はかかる懈怠に基因するものであるからその費用はこれを訴訟費用の中に含ましめるべきでない。殊に相手方は第一審の勝訴者であつて、控訴審における休止満了の場合勝訴判決が確定することとなるから、特別の事情のない限りかかる場合の期日指定申請が権利の伸長防禦に必要であるとは考えられない。従つて原決定が前記各期日指定申請に関する費用を訴訟費用として計上したのは失当である、と主張する。仍て検討するに、相手方の訴訟代理人(被控訴代理人)が昭和二十九年四月十九日付及び同年十二月二十四日付でなした各期日指定申請は、本案訴訟事件が控訴審においていわゆる休止の状態にあるとき、第一審の勝訴者側よりなされたものであること本案事件記録に照し明らかであるけれども、期日指定申請に関する費用が訴訟費用に属することは多言を要しないところであるから、抗告代理人所論の如く前記各期日指定申請が相手方の期日懈怠に基因するものであり且つ相手方の権利の伸張に必ずしも必要でなかつたとしても(控訴審において訴訟事件がいわゆる休止の状態にある場合、第一審の勝訴者側においても、なお期日指定申請をなして訴訟の進行を図り控訴審裁判所の判決を求める権利を有するものと解すべきであるが)、本案事件の判決において裁判所が民事訴訟法第九十条または第九十一条を適用することなく、前記の如く抗告人に訴訟費用の全部を負担させている以上、訴訟費用額確定の手続において、前記期日指定申請に関する費用を権利の伸張若しくは防禦に必要でない行為に因つて生じた費用であるとして、抗告人の負担すべき訴訟費用中より除外することは許されないものといわなければならない。
尤も期日指定申請に関する費用であつても、如何なる範囲の費用が訴訟費用となるかは別個の問題であつて、この点については訴訟費用額確定手続において民事訴訟費用法第一条以下の規定に従い、これを審査するを要するこというまでもないところ、論旨は進んで仮に前記主張が容れられないとしても、期日指定申請書の提出は郵便にて事足りるから、原決定が昭和二十九年四月十九日付期日指定申請に関する訴訟費用として、該申請書提出のための日当(金百八十円)をも計上したのは失当である、と主張するにつき検討する。本案事件記録によれば、右昭和二十九年四月十九日付期日指定申請書が郵便により提出された形跡はなく、右申請書は相手方の代理人が当高等裁判所に持参提出したものと認めるの外なきところ、期日指定申請書は郵便で裁判所に提出することができることもとより所論の通りであるけれども、当事者またはその代理人が期日指定申請書を裁判所に持参提出したときはその提出のための日当も期日指定申請に関する訴訟費用の中に含まれるものと解するのが相当である。従つて相手方の代理人がなした前記昭和二十九年四月十九日付期日指定申請に関し、原決定が右申請書提出のための日当を訴訟費用として計上したことが不当であるとはいえない。従つて論旨はいずれも採用できない。
同第四点について。
論旨は、原決定は相手方の代理人(被控訴代理人)に対する昭和二十八年七月十六日の口頭弁論期日呼出状送達のための費用(金九十五円)を訴訟費用として計上しているところ、右口頭弁論期日は相手方の代理人が控訴代理人(抗告人国の代理人)の同意を得ないで一方的になした期日変更申請に基き変更指定された期日であつて、かかる期日変更はその責を期日変更申請人の側において負担すべきであり、右変更期日の呼出費用は権利の伸張防禦のために必要であつたものと認められないから、これを訴訟費用として計上したのは失当である、というのである。しかし口頭弁論期日の呼出費用が訴訟費用に該当することはいうまでもないところであり、当事者の一方よりなされた口頭弁論期日変更申請につき相手方が同意していなかつたとしても、裁判所が右期日変更申請を許容し、口頭弁論期日変更決定をなした以上、その変更期日の呼出費用はもとより訴訟費用に該当するものというべきである。原決定が訴訟費用として計上した相手方の代理人に対する昭和二十八年七月十六日の口頭弁論期日呼出のための郵便料金九十五円が所論の如く権利の伸張防禦に必要でない費用であるということはできず。論旨は採用できない。
同第五点について。
論旨は、書類の取寄嘱託が取消され、その後訴訟の相手方より該書類が任意に提出された場合には、右書類の送付料の支出があつたものといえないのに拘らず、原決定が受託者よりの取寄書類の送付料(金百五十円)を訴訟費用として計上したのは不当である、と主張する。仍て本案事件の記録を調査するに、控訴審における昭和二十八年十一月十七日の口頭弁論期日において、裁判所は被控訴代理人(相手方の代理人)の申出に基き愛媛県伊予郡南伊予村農業委員会より農地買収に関する議事録及び農地買収計画書等を取寄せる旨の決定をなしたが、その後昭和二十九年三月五日の口頭弁論期日において右書類取寄の決定は取消されたこと明らかであるけれども、右取消に先立ち、右南伊予村農業委員会は当高等裁判所よりの書類送付方嘱託に基き同年三月二日右取寄に係る書類を当高等裁判所に送付提出したこと記録上明らかであるから(本案事件記録第三一四丁)、右取寄書類の送付料も訴訟費用の中に含まれるものといわなければならない。原決定が前記取寄書類の送付料金百五十円を訴訟費用として計上したことが不当であるとはいえず、論旨は採用できない。
同第六点について。
論旨は、原決定には、昭和二十七年十二月五日付弁論再開申請書書記料(金五円)が訴訟費用として計上されているところ、右弁論再開申請は客観的に相当と認められないから、かかる弁論再開のための費用は訴訟費用に該当しないというのである。仍て本案事件記録を調査するに、第一審の口頭弁論終結後昭和二十七年十二月五日原告代理人(相手方の代理人)より弁論再開申立書が提出されたこと、しかし第一審裁判所たる松山地方裁判所は口頭弁論の再開をなすことなく、原告(相手方)勝訴の判決を言渡したこと明らかであり、右弁論再開申請は結果的に見て必要がなかつたものであることを窺うことができ、また訴訟の当事者は弁論再開申立権を有しないこと所論の通りであるけれども、弁論再開申請に関する費用も訴訟費用の中に含まれるものと解するのが相当であり、訴訟費用の負担に関する裁判において、特に弁論再開申請に関する費用を除外していない以上、原決定が弁論再開申請書書記料金五円を訴訟費用として計上したことが不当であるとはいえない。従つてこの点の論旨も理由がない。
同第七点の(イ)について。
論旨は、弁護士たる訴訟代理人名において提出された訴訟書類の作成者は通常その訴訟代理人であり、その作成実費は特約なき限り弁護士の報酬金中に包含されていると解すべきであり、弁護士に対する報酬は訴訟費用とならないのであるから、訴訟代理人の提出した訴訟書類の書記料は特に当事者本人が出費したとの疎明がない限り、訴訟費用の中に含まれないものというべきである然るに原決定が右疎明がないのに拘らず、訴訟代理人の作成提出した訴状、準備書面、証拠申出書及び書証写等の書記料を訴訟費用として計上したのは首肯し難いというのである。しかし訴状その他訴訟書類の書記料が訴訟費用に該当することは民事訴訟費用法第二条の規定に照し明らかであり、訴訟書類を弁護士たる訴訟代理人が作成した場合であつても、その書記料は訴訟費用に該当すること多言を要しないところである。もとより多くの場合弁護士たる訴訟代理人は依頼者より報酬を受けるであろうけれども、弁護士に対する報酬は訴訟書類作成費用とは別個のものであつて弁護士たる訴訟代理人が依頼者より報酬を受けるからといつて、その作成する訴訟書類の書記料が訴訟費用に該当しないものということはできない。またこの場合当事者本人が弁護士に対し報酬以外に書類作成費用を支出したことの疎明は必ずしも必要でない。従つて原決定が、弁護士たる訴訟代理人名において提出された訴訟書類の書記料を訴訟費用として計上したのは相当であつて、論旨は採用の限りでない。
同第七点の(ロ)について。
論旨は、裁判所所在地の弁護士が訴訟代理人である場合その訴訟代理人が訴状提出或は期日出頭のための日当を訴訟費用として認めるには、弁護士報酬以外に当事者本人から訴訟代理人に対し日当を支払つたことの疎明が必要であると思考されるところ、原決定は何等の疎明なくして弁護士たる訴訟代理人の訴状提出のための日当、第一審裁判所における期日出頭のための日当、証拠調受託裁判所における期日出頭のための日当等を訴訟費用として計上したのは失当であるというのである。しかし裁判所所在地の弁護士が訴訟代理人である場合であつても、その訴訟代理人が裁判所に訴状を提出するための日当、並に期日出頭のための日当はいずれも訴訟費用にあたるものと解するのが相当であり、右日当は弁護士に対する報酬とは別個のものと解すべきであるから、原決定において弁護士たる訴訟代理人が訴状提出のため裁判所に出頭した日当、口頭弁論期日または嘱託証拠調期日に出頭した日当等を訴訟費用に計上したのは相当であるといわなければならない。
この場合弁護士に対する報酬以外に当事者本人が弁護士に対し日当の支払をしたことの疎明は必ずしも必要でなく、所論は採用できない。
然らば原決定において確定した訴訟費用額の中、訴訟費用額確定決定申立書添付計算書書記料として計上した金五百八十五円は抗告理由第二点に対する判断において説示した如く金百九十五円が相当であつて、右金百九十五円を超える部分即ち金三百九十円は不当であるが、その他の分はいずれも相当と認められるから、原裁判所において確定した訴訟費用額金二万千六百四十二円より右金三百九十円を控除した残額金二万千二百五十二円を以て、抗告人の負担すべき訴訟費用額と確定する。
仍て本件抗告は一部理由があるから、右の限度において原決定を変更すべきものとし、民事訴訟法第四百十四条第三百八十六条第九十二条但書九十五条を適用して主文の通り決定する。
(裁判官 石丸友二郎 浮田茂男 橘盛行)
(別紙)抗告理由
第一、当事者又はその代理人が同一裁判所の同一期日に数件の事件を兼ねて出頭した場合の旅費及び宿泊料は、各事件数に等分した額を以つて当該事件の訴訟費用とすべきである。
原決定によれば左表記載の如く訴訟代理人が二審口頭弁論期日出頭の為めに要した旅費及び宿泊料の全額を本件の訴訟費用として計上されているが、右同日には他の控訴事件期日を兼ねて出頭したことは意見書添付証明書によつて明白である。
かかる場合、日当は別としても旅費及び宿泊料は各事件に等分して計算さるべきで、この分担額を超過する部分は本件の訴訟費用とはならないものと解する。
これに反して一件のみにその金額を計上するものとせば他の事件は無関係の他人の出捐によつて訴訟を遂行する不合理を招致し、又もし各別に全額を計算するものとせば、事実に相違して重復の旅費、宿泊料を認容する不当を生じ、いずれにしても甚だしく公平を失する。
(参照)
同一裁判所の数事件について出廷した証人には一度分の旅費日当を事件数に等分して支給すべきである(昭和十二年十二月八日決曹会決議)
指定期日と事件数表
二審期日 旅費宿泊料 同期日に指定された本件代理人の担当事件数
昭和二八、 七、一六 一、五一〇円 (本件を含む)三
〃 一一、一七 一、五一〇円 〃 二
〃 二九、 六、二八 一、五一〇円 〃 五
〃 九、一〇 一、五一〇円 〃 五
〃 三〇、 三、一五 一、五一〇円 〃 四
〃 五、二四 一、五一〇円 〃 三
〃 八、一六 一、五一〇円 〃 四
〃 一〇、一一 一、五一〇円 〃(内二件は休止のようである)一一
〃 一二、一三 一、五一〇円 〃 四
第二、訴訟費用額確定決定申立の為めの計算書書記料は、裁判所用一通分及び相手方の数に相応する通数分以外は訴訟費用とはならない。
本件計算書は二通(裁判所一通、相手方送達用一通)を作成提出すれば足り、爾余は作成したとしてもその書記料は、訴訟費用とはならないものと解する。
然して本計算書は一通につき九十七円五十銭であるからその二通分却ち百九十五円が正当であるに拘らず原決定には金五百八十五円として過大に計上されている。(六枚裏)
よつて差引三百九十円を右訴訟費用から除外すべきものと思料する。(民事訴訟における訴訟費用の研究二五〇頁第三八問参照)
第三、休止事件の期日指定申請に関する経費は訴訟費用とはならない。
当事者が弁論期日に出頭しないことは権利行使の重大なけ怠であつて、そのため事件が休止となつたことに対する双方の責任は免れ難いところであるが、衡平の原則上勝訴者のかかるけ怠に基因する費用まで訴訟費用に含めることは不当であると思料する。
原決定の計算書中
昭和二十九年四月十九日付期日指定申請(五枚表)
同年十二月二十四日付期日指定申請(同裏)の諸費用はいずれも事件休止に対する期日指定申請であるから右理由によつて除外さるべきものと思料する。まして本件において相手方は一審勝訴者であり、休止満了となればその勝訴が確定するわけであるから、特別の事情のない限り右期日指定申請が権利の伸長防禦上必要とは考えられないのである。
若し、然らずとしても原決定が、相手方提出計算書中より右昭和二十九年四月十九日付期日指定申請のための旅費宿泊料千五百十円を削除し乍ら、提出日当百八十円を認容しているのは不合理であつて、期日指定申請書は郵送にて事たりる(本件では休止三日目)ものであるから、右提出日当は権利の伸長防禦に必要な費用とは認められない。よつて当然に右日当をも除くべきものと思料する。
第四、選任した第二審訴訟代理人の都合で、相手方の同意を得ることなくして期日変更申請をした場合の呼出費用は、訴訟費用とはならない。
原決定の計算書によれば
昭和二十八年七月十六日弁論期日被控訴人呼出料(四枚裏)として金九十五円が計上されている。これは右のように、相手方(控訴人)の同意がなく一方的な申請によつて変更された期日の呼出料であることが記録に徴して明らかであるから、その責はすべて申請人側において負担すべきであり、衡平の原則上、右呼出費用は権利の伸長防禦のために必要であつたものと認めらるべきではない。
第五、書類取寄嘱託が取消され、その後相手方より該書類の任意提出があつた場合は通常書類送付料の支出があつたものとはいえない。
原決定計算書中
昭和二十八年十一月十七日付申出に係る書類取寄嘱託書同封の送付料(五枚表)
として金百五十円を計上せられたのは、何等かの誤謬ではないかと思われる。右嘱託は昭和二十九年三月五日の弁論期日において取消され、その後相手方たる控訴人側より任意に該書類を提出したものである。故にたとい右送付料を嘱託書に同封したとしても受託者が嘱託に応じたわけではないから、該料金は受託者より返還を受けるのが正当で、訴訟費用として計上すべきものではない。
第六、訴訟状態よりして「客観的に相当と認められない弁論再開申立」の費用は、訴訟費用とはならない。
原決定計算書中
昭和二十七年十二月五日付弁論再開申請書書記料(四枚表)として金五円を計上されているが、当事者には弁論再開申請権がないのみならずその申立は必ずしも書面による必要がなく口頭でもたりる。
しかして本件においては、右申立に係る弁論再開の行われることなくしてその者が勝訴の判決を得て居り、しかも控訴審の頭初においては再開申立者よりその蓋然性をうかがうに足る新主張もなされていないのであるから、結局右申立は客観的に権利の伸長防禦上必要であつたものとは認められない。
よつて右費用は削除さるべきである。
第七、
(イ) 弁護士たる訴訟代理人名において訴訟書類が提出された場合の書記料について、
右の場合の書類作成者は通常訴訟代理人であり、その作成実費は特約なき限り弁護士報酬金に包含されていると解するのが相当である。しかして右報酬は訴訟費用とならないのであるから前記書記料を訴訟費用として認めるためには、本人において特に出費をしたりとする疎明が必要と思考する。
原決定計算書中左記の書記料については適切な右疎明を欠いて之れを認定せられたものと思料せられるので抗告人は首肯し難い。
記
訴状書記料 七〇円
昭和二五、 六、二二付 証拠申出書書記料 七円(印紙代を除く)
同 二五、 七、二〇付 〃 三四円( 〃 )
同 二五、一〇、一七付 準備書面書記料 一六一円( 〃 )
同 二五、一〇、一九付 証拠申出書書記料 一〇円( 〃 )
同 二五、一二、二一付 〃 一七円( 〃 )
同 二六、 三、 一付 準備書面書記料 二一円( 〃 )
同 二八、 七、一六付 証拠申出書書記料 二六円( 〃 )
同 二八、一一、一七付 〃 一六円
同 三〇、 五、二四付 準備書面書記料 七七円
同 三〇、一〇、一一付 〃 一六五円
同 日付 証拠申出書書記料 三〇円(印紙代を除く)
及び甲号各証書記料
(ロ) 裁判所所在地に在住する訴訟代理人の訴訟提出日当及び期日出頭日当について
本人に代つて代理人が期日に出頭する場合の日当が訴訟費用となることについては敢て異議はないが、本件の如く、第一審裁判所所在地の弁護士を代理人として委任した場合、右代理人の訴状提出、期日出頭等につき、その都度実費弁償の趣旨において、弁護士報酬以外に本人から代理人に対し日当の支払いをするということは異例に属し、特別の場合と考えられるので、これら日当を訴訟費用として認めるためには、前記(イ)と同様疎明の必要があるものと思考する。
しかして、原決定計算書中(左の日当は前同様疎明なくして之れを認められたものと思科するので首肯し難い次第である。
記
◎ 第一審費用中
昭和二五、 六、二二 一二〇円
同 七、二〇 〃
同 九、一四 〃
同 一〇、一九 〃
同 一二、二一 〃
同 二六、 二、 一 〃
同 三、 一 〃
同 二七、 七、三一 一八〇円
同 一二、二五 〃 (判決言渡で出頭の要もない)
◎ 第二審費用中
訴状提出日当 一二〇円
証拠調受託庁へ出頭 一八〇円
昭和二八、五、二一 証拠調受託庁へ出頭 一八〇円
〃 九、一四 〃 一八〇円